吉本隆明著「悪人正機」を読んで
吉本隆明という名前を少し前に耳にすることが多かった。はてなキーワードで調べたら次の記事をみつけた。
http://media.excite.co.jp/book/news/topics/117/p03.html
「ばななしか知らない人のための吉本隆明入門ー最強にして最大の言葉」である。その中で「悪人正機」が手頃な価格であったので購入をし読んでみた。その感想と気になったところを書いてみようと思う。
「生きる」てなんだ? (p17)
「泥棒して食ったっていいんだぜ」と言われることがある (p19)
他人っていうのは、自分が自分を考えているほど、君のことを考えてるわけじゃないんだぜ (p20)
この言葉は吉田隆明さんが年配の数学の先生の助手に言われた言葉であるそうだが、まことに真実を述べている言葉であると思う。とかく人間というものは他人からどう思われているかを気にしすぎていることが多いと思う。
頭だけじゃダメ。手を使わなきゃ何もできない (p24)
要するに、手を使わなければ何にもできないんですよ。頭だけ使って、手で考えてないようなのはだめなんだってことはわかってるんです。 (p25)
頭デッカチはだめだということかもしれない。
「友だち」ってなんだ? (p31)
結局、人生というのは孤独との闘いなんだ (p41)
結局、どっちだって同じ、どうせひとりよ、ということなんです。月並みだけれども人生というのは孤独との闘いなんですから。 (p42)
渡辺千賀さんが「最後の砦は家族」と言っていたが、どうせひとりよ、という吉本さんの言葉も同じ意味合いであると思う。
「挫折」ってなんだ? (p43)
「終戦」の日、捉えどころのない挫折感を味わった (p45)
まあ、挫折を知らないからダメだって言われても、どうすることもできないわけだからね。挫折なんて、しらないならしなくていいですよね。というかできないですからね。
そういう説教をする上司とか先輩とかがいたら、ただ、いい加減に聞き流してりゃいいんです。 (p45)
まったくそのとうりだと思う。
挫折については、これで終わりなんだけど、僕自身が挫折をしたかってことについては、まあ、ひとつだけ、これだけはとんでもなく別ものだぞっていう経験がありましたね。
戦争が終わった時です。 (p45〜p46)
「戦争が終わった時」がなぜ挫折をしたかは、この前後の文面をみても私にはわからない。他の著書を読んで理由をつかみたいと思う。
「殺意」ってなんだ? (p53)
専門家の言う「正常」の範囲は、もう現実には通用しない (p57)
今の社会で、普通に生きている人だったら、法律の範囲を少し逸脱したところまでは、行くんじゃないかと思います。まあ、酔っぱらった勢いとかね。
だかた、その現実の正常の範囲を、法律の範囲よりも、専門家が広げて考えなきゃいけないのに、法律にそのまま従って異常だと言っちゃてるでしょ。そういう人たちが、一番悪いんですよ。 (p57)
今起きている犯罪とかをみていると、吉本さんが言うことがあてはまるところがある。
「殺意」は持つだけなら異常でもないし、法的にも問題なし (p59)
結局、誰かが「殺してやりたい」と思っても、そう言っても、それはかまわねんだし、異常でもなんでもないし、法的にも問題ないんだっていうことです。ま、本当にやったら別ですけど。(笑)。 (p61)
「言論の自由」が歯止めになる、と吉本さんは言っている。しかし、最近の状況をみると、微妙な感じがする。
「仕事」ってなんだ? (p63)
働くのがいいなんて、それはウソだよ (p67)
それは、人間に対する考え方っていうものによって違いますから清貧の人は、やっぱり人間、働くからいいんだって言うんでしょうけど、僕は、それはウソだって思ってますね。遊んで暮らせて、やりたいことができてっていうのが、いちばんいいんですから。 (p69)
そうかもしれない。でもなかなかそうはなれないものである。
仕事がイヤになったらどうする (p71)
僕は愚図だけど、粘るっていうのがあります。じたばたしろっていうことですかね。ほんとにダメだと思っても、じたばたしろっていう、ね。 (p72)
私もジタバタするぞ。
「物書き」ってなんだ? (73)
「理想の上司」ってなんだ? (p81)
仕事ができて、自由な雰囲気をつくってくれる人なんだろうな (p83)
ですから、仕事がよくできる人で、細かく干渉しない。自由な空間をつくれるっていう人が「理想の上司」なんだと思いますね。 (p86)
同感。でも、なかなかお目にかかれないし、自分もなれないものである。
上司以上に大切なのは、実は「建物」なんだ (p87)
おもしろい。いい建物は雰囲気がいいらしい。
いいリーダーにはなれないけど、いい親になら・・・ (p88)
鹿児島県出身の明治の元帥で、大山巌っていう人がいるんですけど、現実にどうだったかは知りませんけど、伝説的には、いちばんいいリーダーだって思いますね。 (p88)
そんなにいいリーダーか、気になる。
大山巌
明治の元帥・陸軍大将。日本陸軍の創世記から日露戦争にかけて活躍した軍人。西郷隆盛はいとこにあたる。
子供が何をやろうと、たとえ犯罪者になろうと、オウムに入って出家したいって言おうと「やってみな」というだけでね。「挫折したりイヤになったりしたら、まあ、戻ってくればいいよ」って。 (p89)
この言葉はとても重みのある言葉であると思う。私もいい親になることを目指したい。
「正義」ってなんだ? (p91)
善悪の基準はどこにある? (p93)
何が正しいのかを「これなんだ」と決められない以上、少なくとも今までの善悪の基準というものが「おかしいんじゃねえか?」ってことも考えに入れとか無いと、どうしようもなうぜってことだけは言えるんじゃないでしょうか。 (p94)
確かに宮本さんの言うとおりかもしれない。最近の事件や犯罪をみていると、そういう感じがする。
アメリカの正義は主観的なおせっかいだ (p95)
何かあったら「やめろ!」と言うのは、自分らの使命なんだっていうことはあるんじゃないでしょうか。 (p95)
これはアメリカのことを言っている一節である。必要といえば必要であるかもしれない。
突っ張るべきところと、妥協するべきところを、世界的先進国の少し上のほうから判断して対抗していくことが必要なんでね。 (p97)
太平洋戦争で得た教訓としてこのことを述べている。これが当時日本にはできなかったのだろう。
「国際化」ってなんだ? (p101)
近代国家を超えるときは、過去も超えなきゃいけない (p111)
要するに伝統的なもの、地域的なもの、特殊性とかっていうのを、今の近代国家の範囲内で見える段階より、もっともっと掘り返しちゃってというか、さらに深めていくっていう方向にもいくんじゃんないかと思います。つまり、それは近代化っていう、近代国家を超えるっていう場合に過去も超えないといけない、みたいな感じですね。 (p112)
わかるようなわからないような言葉であるが、なんとなくわかったたような気がする部分である。
「戦争」ってなんだ? (p127)
現在の日本の「第二の敗戦」だと思ってる (p134)
「二・二・六事件」の前後ってのが、こんな感じだったと思いますね。
当時も、お話にならないようなことを政府がやってたもんだから、東北をはじめとする農村の窮乏がひどいところにきていたことに、若い軍人が怒りだしちゃったわけですが、その「二・二・六」前夜の風景と、今はそっくりなんですよ。 (p134〜p135)
そのあとは太平洋戦争の敗戦という結末になった、と吉本さんは述べ、外圧でしか現状を救えないとも述べている。そうなのだろうか?
真剣に考える自分の隣の人が、テレビのお笑いに夢中になっていたり、遊んでいたりするってことが許せなくなってくるっていうのは、間違っているんです。(p136)
私もしょっちゅう間違っていることをしていた。これからは改めなくては。
「家族」ってなんだ? (p155)
円満な家庭なんて、そんなものはねえんだよ (p157)
経験上、実感上から言っても、そんなものはねえよって思うから、たいていはウソをついてるんじゃないでしょうか。 (p157)
「円満な家庭はない」と述べている部分である。家庭はそういうものであると、私は思う。
「素質」ってなんだ? (p169)
素質が問題になるのは、一丁前になってから (p171)
いつも言うことなんですが、結局、靴屋さんでも作家でも同じで、10年やれば誰でも一丁前になるんです。だから、10年やればいいんですよ。それだけでいい。 (p171)
これはすべての職業にあてはまることではないかと思う。素質だけでその職業を極める人などごくまれである。
「テレビ」ってなんだ? (p231)
テレビを見るのは、たださみしいから (p233)
これは、何回も自分で考えてきて、自己分析みたいなことをしてきたんですけど、そこで最近わかったのは、結局、僕がテレビをつけっぱなしにしているのは、さみしいからじゃないかな。 (p233)
私もさみしいからテレビをつけておくのかもしれない。しかし、最近はテレビを消してブログを読んだり、本を読んだり、日記をつけたりが多くはなっている。
「言葉」ってなんだ? (p257)
「文化」ってなんだ? (p281)
これからの文化を支えるのは、第三次産業的な「週間誌」だ (p286)
そうなのだろうか。
「お金」ってなんだ? (p297)
借金も財産と思えなければ、お金のチャンピオンになれない (p299)
そもそも、返すとか借りてるとかってことが気になっているようじゃ、お金についての才能がないと思ったほうがいいでしょうね。 (p301)
そんなことは何でもないんだみたいに平然として、脅かされたら、どうにでもしてくれみたいな感じで対応できるようにならない限りは、本当のお金持ちというか、制度的なお金のチャンピオンにはなれないんだっていう気がしますね。 (p301)
なるほど。凡人はちょっと借金が増えるとネガティブになってしまうから。
病院からもどってきて (p305)
大まじめは、ダメです (p312)
仕事なんてものも、大まじめにやっていたら、誰でもかならず、だんだん、「どうやったって、もうだめだ・・・・」というふうになってしまいますからね。そいういうことだと、そうそう続かないものです。 (p314)
たしかにそうかもしれない。大まじめにやっている時はあまりいい仕事ができないものだ。
自然体で続けるということ (p315)
いいときも悪いときも、波の高いときも低いときも、動揺なく、自然体で続けていくことって、すげえもんだなぁと感じています。(p315〜p316)
これはなかなか難しいことである。できればいい仕事ができるのだろう。
自己評価より下のことを (p316)
評価が狂わないとすれば、自己評価よりも少し高度なことなんて、やってみたところで、どうにもならないわけですからね。 (p318)
向上心がないと言われそうな言葉である。吉本さんであるから、言える言葉であると思う。
中でもって、中がわかるということ(p333)
中沢さんは、チベットの現在の宗教家の中で、人から重んじられてる人が、祖先の考えを受け継ぎながら、今は何を考えて、これまでどういうことをやってきたんだかをわかりたいと考えた。そのためには、その人と同じことをするしかないということで、彼は修行のしかたを、習うわけですね。教わりながら、相手が考えていることを察知するというか。 (p333〜p334)
これが吉本さんが言う「中でもって、中がわかる」ということである。「相手の立場になって」とか「相手の気持ちになって」ということはこのことかもしれない。
中沢新一の「チベットのモーツァルト」について興味がわいた。
なかなか気になる言葉、ためになる言葉が多数ある著書であった。また、気持ちがすーっとなる部分も多数あり、初心者向けということでわかりやすくもあった。
- 作者: 吉本隆明,糸井重里
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