「羊をめぐる冒険(上)(下)」村上春樹著を読んで
村上春樹さんの著書の中で今回は「羊をめぐる冒険(上)(下)」を読了した。その感想と気にななったところを書いてみる。
「羊をめぐる冒険(上)
第2章 1978/7月 (p25)
1 十六歩歩くことについて (p27)
「あなたは何か、そういったところがあるのよ。砂時計と同じね。砂がなくなってしまうと必ず誰かがやってきてひっくり返していくの」 (p36)
僕とその別れた妻の会話の一部である。「砂時計と同じね」という言葉、面白い。
第4章 羊をめぐる冒険1 (p83)
3 「先生」のこと (p103)
「株だと。奴の資金源は株なんだ。株式操作、買占め、乗取り、そういうことさ。そのための情報を彼の情報機関が収集し、それを彼が取捨選択するんだ。そのうちマスコミに流れるものはごく一部でね、残りは先生が自分のために取っておくわけだよ。もちろん直接にではないけれど脅迫まがいのこともやる。脅迫が効かない場合には、その情報はマッチポンプ用に政治家に流れる」 (p107)
ありそうな話である。こんなことが。
第6章 羊をめぐる冒険2 ((p179)
6 日曜の午後のピクニック (p234)
それから僕はアパートの駐車場から廃車寸前のフォルクスワーゲンを出してスーパー・マーケットにでかけ、キャットフードの缶を1ダースと猫の便所用の砂と、旅行用の髭剃りセットと下着を買った。 (p238)
まさに廃車寸前のフォルクスワーゲンに、1980年代に私も乗っていた。とても懐かしい。高いエンジン音がとてもよかった。
7 限定された執拗な考え方について (p244)
十円玉がかたんという音を立てて落ちた。僕はあと3枚の硬貨を入れた。 (p252)
かたんと十円玉が落ちる音。今となっては味わえないが。
「羊をめぐる冒険(下)」
第8章 羊をめぐる冒険3 (p77)
11 闇の中に住む人々 (p213)
「君はもう死んでるんだろう?」
鼠が答えるまでにおそろしいほど長い時間がかかった。ほんの何秒であったのかもしれないが、それは僕にとっておそろしく長い沈黙だった。口の中がからからに乾いた。
「そうだよ」と鼠は静かに言った。「俺は死んだよ」 (p220)
よくわからないが、死んだ鼠が僕と話をしているということである。死んだ人間が、死んだ後に自分のことを死んだと言っている。とても不思議だ。
「簡単に言うと、俺は羊を呑み込んだまま死んだんだ」と鼠は言った。「羊がぐっすりと寝込むのを待ってから台所のはりにロープを結んで首を吊ったんだ。奴には逃げ出す暇もなかった」 (p223)
鼠は羊ともどもこの世を去った。羊に自分を支配される前にだ。おそらく支配されるのがいやだったのだろう。これでこの世界から羊は完全に葬り去られたといえるかもしれない。
この「羊をめぐる冒険」はストーリーの展開がよく、ひとつひとつの部分があまり記憶に残らずに読み終えてしまった。まあ気がついたらストーリーの結末にいたったという感じで、私にとっては理解しやすい小説であったといえるかもしれない。
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