『約束された場所で』村上春樹著を読んで

普通の結婚をして普通に子供を育てることが修行なんだよと。それが本当にいちばん大変な修行なんだよ。  (p66〜p67)

オウム信者であった波村秋夫さんが語った沖縄の有名なユタの言葉である。なんとなくわかるような気がする。

善悪を二つに割ってしまって、これは善、これは悪というのは、へたをすると危険なことになります。善が悪を駆逐するというか、そうすると善は何をしてもかまわないということになってしまいます。それが一番怖いことです。オウム真理教の人だって、自分たちは善だと思うから、あんな無茶苦茶なことをやったわけですよね。ついつい悪いことをした・・・というのとは違います。
これは昔から言われていることだけれど、悪のための殺人って非常に人数が少ないです。それに比べると善のための殺人というのをものすごく多い。戦争なんかそうです。
だから善が張りきりだすとすごく恐ろしい。でもだからと言って「悪がいいです」なんて言えませんから、すごく困るんですわ。  (p274)

著者の村上春樹河合隼雄との対話の中で、河合隼雄の語った言葉である。
とても説得力がある言葉であり共感した。

この著作はオウムの信者及び元信者が語ったものが掲載され、村上春樹河合隼雄の対話も掲載したノンフィクションである。
これまで私が知らない事ばかりで、とても興味深いものばかりであった。

約束された場所で―underground 2 (文春文庫)

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