『iPadがやってきたから、もう一度ウェブの話をしよう』梅田望夫著を読んで

ネットスケープは事実上解体されましたが、その思想は、人が移動していったことで、他者ーアップルやグーグル(グーグルにも元ネットスケープのエンジニアがたくさん流れ込みました)−において引き継がれて大きく開花した。ここで数便のやり取りで学んだのは、そんなアメリカらしい強さが発露された好例でした。<優秀で影響力のある人材が会社から会社を渡り歩きながら、業界全体に影響を及ぼす仕事をする、というところが米国の会社の面白さ>
という点については深く共感します。
また同じことが日本ではなかなか起こらない。そういうところに日本企業の低迷の一因があるということも、部分的にはその通りだと思います。
  (p220〜p222)

優秀な人材が会社を渡り歩きながら、業界全体に影響を及ぼす。とてもすばらしいことであると思う。

「次の50年」は、「変化が常態」の時代になる。未来は何が起きるか本当にわからない。そんな時代を生きる上でいちばん大切なことは、未知を楽しめる心、未知を探求できる強さを持つことだ。未来とは不確実で予測不能なものだからこそ人生は面白いんだ、そう思って毎日を生き、わからないことの面白さや混沌を楽しめるだけの自信をつけよう。それが現代において何かを学ぶことの一番大きな意味だ。そして何より大切なのは、「生活」を人生の目標にしないこと。フロンティアへの挑戦や冒険、研究や創造、知的興奮の追求、パブリックな精神に基づいた活動、グローバルな難題の解決・・・・、没頭する対象は何でもいい。でも、おいしいものを食べるとか、便利で快適で安全な暮らしとか、そういった「生活」レベルのことではなく、それよりも上位の価値を追い求めること。それが、先進国の恵まれた環境に育ってよい教育を受けている君たちの責任だ。「次の50年」って、人類の前に本当に解けるかどうかわからないような難題が積み上げられている時代なのだから・・・・。  (p444〜p447))

生活を人生の目標にしないこと。とても耳の痛くなる言葉だ。しかしながらこれがこれからは必要なのかもしれない。

では、社会が「よい方の黒い白鳥にめいっぱい自分をさらす」とはどういうことか。タレブによれば、人が積極的に試行錯誤をして運のいい思いをするのを認めること、草の根レベルのひらめきや見通しも立たないままでやる試行錯誤に寛大になること、自分なりの「よい方の黒い白鳥」に取りつかれている人に挑戦させること、チャンスやチャンスみたいに見えるものには片っ端から手を出すこと、人生をやっていくには何度も小さな失敗をしないといけないという考えを受け入れ、失敗にいたる過程を推奨すること・・・・。  (p475〜p477)

早くこういう雰囲気が漂う社会になってもらいたいものだ。

往復書簡もなかなか面白く読ませていただいた。いろいろ考えさせられるものが多い著書であると思う。