『大往生の島』佐野眞一著を読んで

 戦前の学校を思わせる本造の役場に入って、職員のカラフルな服装にまず驚かされた。男性も女性も全員、花模様の派手なアロハシャツを着ている。
 周防大島とハワイのカウアイ島は姉妹島の提携を結んでおり、この習慣は移民百年を記念して、昭和六十一(一九六八)年にはじまった。七月と八月の二カ月間は、役場の職員のみならず、農協や金融機関の職員まで全員アロハシャツを着用しているという。この島は古くからハワイ移民の島として知られている。  (p23〜p24)

 なぜアロハシャツかと思ったが、理由を聞いて納得した。私も一度だけカウアイ島を訪れたが、とても居心地がよく食事もおいしくいただけた。日系人が多く生活をしていたからかもしれない、とふと思った。
 また、周防大島宮本常一にひかれるのもこのへんが関係あるのかと思った。まだ行ったことはないのだが。

東北など農村の墓地には、土地に縛りつけられた者の怨霊がいつまでもあたりに漂っているようで、いつも早く立ち去りたい衝動にかられるが、ここはなぜか、海を通して外の世界につながった自由と清澄な空気があふれているようで、いつまでも佇んでいたかった。  (p46)

 地域性があるかもしれないが、お墓はこうありたいものだ。

先日はありがとうございました。
「大往生の島」読ませて頂きました。早速一月には二人大往生しました。淋しいながらも幸せな生き方をしようと頑張っています

 人が亡くなって不謹慎かもしれないが、著者と同じく私も笑った。

ボケの問題は、たしかに、かかえた家族でなければわからん深刻な問題です。(中略)長年、ボケ老人を見てきた専門家の先生がいうちょるんですが、男は必ず四十歳の自分に戻り、、女は必ず十八歳の自分に戻るというんです。男も女も人生で一番いい時代にもどるんですなあ。 
そして、結婚前の一番きれいな時代に戻った女性は、タンスの中から花嫁衣装をゴソゴソ探しだしてから、両親の名前を呼び、次に子供の名前を呼ぶ。ダンナさんの名前を呼んだ女性は私も今までみたことありません。
男性の方は働き盛りの四十代に戻って、なにしろ奥さんの名前ばかり呼びつづける。両親と子供の名前はその次なんです。これはどうも、はじめからそうきまっちょるようですな」
ボケた男性は妻の名を呼びつづけ、ボケた女性は夫の名を一切呼ばない。  (p221)

なにかこのようなことなのかもしれない。
大往生するには理想的な島であるのかもしれない。だからといって年をとってこの島に移住してもそうならないのだが。それがわかっていても私にとってはとても魅力的な島に感じてしまう。

大往生の島 (文春文庫)

大往生の島 (文春文庫)