『東京奇譚集』村上春樹著を読んで

この短編集の中に「偶然の旅人」という作品がある。その中に

「かたちのあるものと、かたちのないものと、どちらかを選ばなくちゃならないとしたら、かたちのないものを選べ。それが僕のルールです。壁に突きあたったときにはいつもそのルールに従ってきたし、長い目でみればそれが良い結果を生んだ思う。その時はきつかったとしてもね」(p34)

とゲイの男が女に話す。
なんとなくわかる気がするし、印象に残る言葉であった。
また、カウアイ島が舞台になる「ハナレイ・ベイ」の中にこんな言葉がでてくる。

「女の子とうまくやる方法は三つしかない。ひとつ、相手の話を黙って聞いてやること。ふたつ、着ている洋服をほめること。三つ、できるだけおいしいものを食べさせること。簡単でしょ。それだけやって駄目なら、とりあえずあきらめた方がいい」  (p92)

サーファーの息子をなくした母が若い男にいった言葉だ。なかなか面白い。また、印象にも残る。
一度しか行ったことのないカウアイ島の景色が目に浮かぶ作品であった。
「どこであれそれが見つかりそうな場所で」を読んでいく中ではむしょうにパンケーキが食べたくなってしまった。
この短編集の中では「品川猿」が一番面白かった気がする。

東京奇譚集 (新潮文庫)

東京奇譚集 (新潮文庫)